真夜中のお土産
夜も更けて、家でのんびりしているところに、飲んだ帰り道の旦那さんから電話がかかってきました
「お土産あるよー!今から帰るね」と楽しそうな声
彼は今夜、鮮魚が自慢の居酒屋さんへ行くと言っていました
魚屋さんが経営する行列のできる有名なお店です
昭和のお父さんみたいに、寿司の折り詰めを人差し指と親指で、ユラユラつまんで帰ってくる姿を浮かべながら、ワタシも楽しみに起きて待っていました
ただいまー!と帰ってきた彼の手には、寿司折りではなくでっかい半透明のビニール袋(一見、ゴミ袋、いやどう見てもゴミ袋)
お土産どこ?ナニソレ??
彼がお土産と呼んでいたものは、
ビニール袋に無造作に入れられた、ぶった切ったままの魚の頭
思わず、「立派ですねー」と感心したくなるほどでっかいお頭が、ドンドンどどーん4カシラ
居酒屋の大将が「これでアラ汁作ったら最高に美味いよ!」と持たせてくれたそうです
アラですから、ぶった切ったまま、当たり前ですよね
鱗もあれば血合いもそのまま
真夜中に、満面の笑みで目の前に突きつけられたお頭、4カシラ
「行列のできる鮮魚店のお頭、それでアラ汁、ステキ、嬉しい!」
ってなるかーい
今からこれ下処理するの?誰が?
料理はからっきしダメな旦那さん
「そのままお湯にザブーン入れたらアラ汁になると思ってた」と言っている
そんなこんなで、やるのワタシしかいなーい!今からー?!
さあ、こんな時、どう対応するのが正解なのでしょう!?

こんな時、どうします・・・?
「正解なんて知ったこっちゃない、5万%やりたくない」
これが正解です
ワタシはどうしたかと言うと、
「余計なもん持って帰りやがって、寝しなに魚の下処理て!七面倒臭い!」と
心の中で叫びながら、そう口には出さず、
アラ汁、作ることにしました
「鱗も血合いもこのままで、お湯に入れたらアラ汁できると思ってたって・・・
YOUお湯に味噌入れたら、味噌汁出来ると思ってるタイプ?(どんなタイプ)
それ“味噌汁”じゃなくて、“味噌溶いた湯”だから」
(実際の顔は、吹き出しのように笑ってはいない、もちろん)
急に変わったワタシの声色と顔に、
「俺やるよ俺やるやる!何すればいい?」と、気の毒に酔いも覚める勢いでピーンとなって彼が言いました
(心の叫び)「うえーーい、うるせー!私がやらあー、塩をよこせー」
(実際の声)「いいよ、ワタシやるから、お塩とって」
そんな時に限って、夕食作りの時に最後の塩をスッカラカン使い切っていたのでした・・・
それから、旦那さんがコンビニに塩を買いに走り、ワタシは鱗まみれになりながら、ビクビクしている人とイライラしている人、2人で真夜中にアラ汁を作ることとなりました
変わってきた空気
イライラしながら始めた、真夜中のアラ汁作り
でも途中からだんだん可笑しくなってきてしまいました
こんな真夜中に、夫婦で魚の鱗まみれになって真剣に出汁をとっていることが可笑しくて、イライラしていたのを忘れて、笑えてきたんです
何かが吹っ切れたように2人で大笑いしながらアラ汁を作りました
初めに袋に入ったアラを見た時に、イラッとした勢いでキレなくて良かった
キレて感情のままに相手を攻めていたら、今のこの可笑しな状況を2人で笑えていなかったな、と思いました
こんなに面白い時間を2人で共有することもなく、嫌な気分で寝ていたかもしれない
そんなことしたら、もったいない もったいない
キレなかった自分と、酔って帰ってきたのにアラ汁アシスタントをしてくれた旦那さんを心のなかで褒めながら、アラ汁を無事に作り終え、磯の香りに包まれて眠りました
キレていたら、無かった時間
です
急いては事を仕損じる
(せいてはことをしそんじる)
【意味】あせって、何かをやろうとすると、失敗しやすい、といういましめ
夫婦の場合、
キレては事を仕損じる
(きれてはことをしそんじる)
